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オリジナルの白いシャツを販売するに至った経緯と気持ち

本当の綿100%の服を作る。

そう思ったのは、今から約5年前のことでした。

自社でモノを作り、販売したことは今回が初めてではなく、店舗を持ち、オリジナルブランドを作って販売をしていたことも過去にありました。

しかし、わずか2年で店舗は閉めました。
原因は、運営が思うように行かなかったことと、もう一つは、いつからか“売り上げを作るためのものづくり”になってしまっていたことが、大きな原因の一つでした。

シーズンやトレンドに合わせ、新しいモノを絶えず量産していく。
この目まぐるしいサイクルに着いていけず、また、そんな大量消費的時代をぼく個人としてもうまく消化することができませんでした。

というのも、アパレル産業では、90年代半から大量生産大量消費時代に入り、早いサイクルのモノづくりが一気に加速し、生産の中心は海外へと移り変わっていったため、日本国内の縫製工場の多くは苦戦を強いられて、ぼくらも同じようにダメージを受けました。

このような背景もあり、工場としての自立することが必要だと始めたオリジナルブランドでしたが、本来やるべきだったものづくりから、奇しくも自らで遠ざけていってしまいました。

一体自分はなにをやってるんだと、打ちひしがれる日々が続きました。

そんな日々が続いたある日、何気なく立ち寄った店で一つのシャツに出会いました。
細部まで丁寧に仕上げられた綺麗でやわらかな佇まい。
ぼくが求めていたクオリティをまざまざと見せつけられたのを覚えています。

と同時に、ぼくらにもこれくらいの、いやもっと綺麗なシャツが作れるはずだと思い、このことがキッカケで、シャツ作りがスタートしました。

まずはそのシャツを買って解体し、繊維や仕様も細かく調べ、一体どんな糸を使っているのかなど、ゼロから一つずつ手探りで進めていきました。
それからそのシャツだけには留まらず、気になったシャツがあれば同じように解体し、パターンや仕様も細かく調べていきました。

こうして数ヶ月が立ち、かなりの数のシャツを調べていく中で、あることに気が付きました。

製品に付いている品質表示には、綿100%という記載があるけれど、確かに生地は綿だけど、ミシン糸、ネームタグ、品質タグ、ボタンなどが綿じゃない。

つまり、“本当の綿100%じゃない”ということでした。

※正確に言えば、何%という表記は、消費者庁が定めたあくまでも「生地の混率」の記載であり、付属品の素材の記載は必要ない。

しかし、ぼくはただ、このアイデアが単純に面白いと思えたのです。

“本当の綿100%”の服を作ろう。

これが、今回の「山田縫製工場のシャツ」の始まりでした。

 

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“本当の綿100%”と言っている以上、「まあ、これくらいでいいか」などという妥協は許されません。
それはつまり、少しでも手を抜けば総体してウソになるということ。

作っていく過程において、その都度迫られる判断。
その一つ一つ、全てにおいて納得できるものでないと、もはや“本当”とは言えません。

こうした小さな納得が積み重なり、少しずつ完成していくその様。

また、目の前の物に向き合い没頭することで、想像だにしなかったものが出来上がる時もあり、そんな驚きもまた、ものづくりが面白い所以であると感じました。

正解はどこにも無く、どんなものが出来上がるかも分からない。
ただ直向きに目の前にあるこの服と向きあうことは、延いては内なる自分と向き合っていくことでもあり、そんな日々がぼくにとっては何事にも変えがたい豊かで幸せな時間だと知ることができました。

“本当”を追求していくこの過程こそが、大切で素晴らしいものだと、一つのものづくりを通して教えられました。

 

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自分にとってウソのないものづくりをしていくこと。
それは決して簡単ではないかもしれないけれど、ぼくのものづくりにおいては欠かせない姿勢。

今回の服づくりで学び感じた多くのことを原点に、探究し続ける情熱を絶やさず、これからもコツコツと納得を積み重ねた服を作っていきたいと思います。

最後に、携わってくださった多くの方々のご協力があり、一つの服を作ることができたこと、痛感しております。
ご協力いただいた皆様に厚く感謝申し上げます。

まだまだこれからがスタートですので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

山田縫製工場
山田雅樹